高齢者のウツ病は全体の20%にも及びますが、本質的には他の年齢層との違いはありません。しかし、それだけ高い率で高齢者にウツが見られるのには、「配偶者との死別による喪失感と孤独」「生活や健康の不安」など、その原因となりうる環境的、心理的ストレスがたくさんあるからです。
そして、加齢ゆえの苦悩は、肉体的にも精神的にも弱っている高齢者には重くのしかかります。そうした状態を「歳だからと」まわりにわかってもらえず、悪化して自殺に至ることも少なくありません。
高齢者のウツを見逃さず、早め早めの治療を行うためにも、その徴候に注意しなければなりません。
「これまで熱中していた趣味などが楽しめなくなる」「集中力の低下」「食欲の低下」「意欲の減退」「すぐに疲れを訴える」「死にたいと言い出す」「安眠できない」などがあれば要注意です。この状態がさらにひどくなると、「落ち着きがなくなり、じっとしていられない」「体の不調をしつこく訴える」「常に不平、不満をこぼす」「いきなり怒鳴り散らす」「過剰に心配ばかりする」「妄想を口にする」などになります。
ただし、判断が難しいことには、高齢者のウツは認知症にとてもよく似ています。
ひとつのポイントとしては、ウツの患者は自殺願望を抱きますが、痴呆のばあいはそうではないということです。
いずれにしても、高齢者のウツのばあい、一般のウツと同様、決して励ましたりはしてはなりません。こちらからの干渉は避けながらも、しっかり見守るようして、速やかに専門医の診察を受けてください。