介護を学ぶ-3

高齢者の食事

人間の食生活は年齢によって変わってきます。
ただし、高齢者のばあい、加齢を原因とする肉体の変化はそもそも一様ではなく、それまでの人生を反映して個人による違いがとても大きくなってきます。そのため、誰もが同じ食事をすれば良いというものではありません。その人にあった食事を摂らせてあげる必要があります。
基本的に高齢者は、①味を感じにくくなる、②喉が乾きやすくなる、③食欲が落ちる、④噛むちからが弱くなる、⑤飲み込むちからが弱くなる、⑥消化液の量が減る、⑦腸の運動機能が低下する、という7点における変化の影響を受けます。
こうした個人の変化を見極めて、食べやすい食事、そして、食べたくなる食事を工夫することがたいせつです。
また、最も注意しなければならないのは、「自ら食べる」ということの重要性です。
体の自由が利かなくなってきたとしても、可能な限り、ご本人に食器を使い、食べ物を選んで口に運ぶようにしていただく。何もかも人に世話をしてもらうと、食べる楽しみが失われます。それが高じると、最終的には食事にたいする興味も意欲もすっかり減退してしまい、健康な肉体を維持することも難しくなります。

嚥下障害

高齢者にとっては普通の人間が通常に行う動作も、状況によっては危険なことになりかねません。
その中でも、飲み込むちからが弱まっていることによる、嚥下障害には注意が必要です。
高齢者は唾液の量が減り、歯がなくなったり顎が弱くなったりすることで、食べ物を咀嚼して飲み込むことが難しくなります。固いものが噛みにくく、うまく飲み込めないというのが、最もわかりやすい例でしょう。そのこともあって、毎年、冬になるとお餅を喉に詰まらせる高齢者が後を絶ちません。
さらに、高齢者は喉の奥にある喉頭蓋の筋肉も弱くなり、食道に行くはずの食べ物が肺に流れ込んでしまうという「誤嚥」を起こすことがあります。誤嚥が起きると、それが肺炎を引き起こすため、生命に関わります。普通の人間なら誤嚥が起きるとむせてしまいますが、高齢者は必ずしもむせることなく、そのまま食べ物が肺に流れ込むので要注意です。
また、多量の唾液が肺に流れ込むことでも、同様の肺炎を引き起こします。ばあいによっては、お茶などの粘度のない液体も、喉を流れ落ちるのが速すぎて、誤嚥を招くことがあります。
誤嚥による肺炎を防ぐには、口の中を常に清潔に保ち(雑菌を減らして過剰な唾液が肺に流れ込まないようにする)、食事中の様子を常に観察する(咳き込んだり、むせたりしていないか注視する)ほかに、食事自体を工夫する(固いものは柔らかく、粘度のないものはとろみを付けるなどする)ことを心掛けてください。

脱水症

高齢者は筋肉が少なくなるので、それにともない体内の保水量が減少しています。そのうえ、腎機能が低下して、老廃物を排出するための尿の量がふえ、感覚が鈍化するので、喉の渇きを感じにくくなっています。
それらの要因が合わさって、本人もまったく自覚しないうちに、高齢者はたやすく脱水症に陥ります。
人間の体は水なくしては正常に機能しません。脱水状態になると、ぐったりとなって微熱が出たり、皮膚が乾燥したり、嘔吐をもよおしたり、最悪のばあい、意識が朦朧となって生命の危険を招きます。 
それを予防するためには、意識して常に水分補給を行う必要があります。
ただし、夏季などは冷たい水を大量に飲むと胃に負担を掛けてしまいます。また、嚥下障害も懸念されますので、単純に何でも飲めば良いというわけではなく、ゼリー状の飲料を選ぶなど、飲みかたを工夫しなければなりません。
何回にもわけて小まめに飲むことが基本ですが、ばあいによっては、果物などで水分補給をすることもできます。
脱水状態では、適度なミネラルを含んでいるほうがすばやく吸収されますので、過栄養にならないように注意は必要ですが、イオン飲料も有効です。
なお、高齢者が1日に必要とする水の量は1.5リットルが目安とされています。

電話でのお問い合わせ・資料請求

ページ上部へ